ナイショの妖精さん1

「わっ!? 」

 瞬間的に腰を引く。そうしたら、リュックの重みで、体が後ろにかたむいた。

「わっ! わっ! わっ! わっ!」

 両手をバタバタ。でも、背中はそり返ったまんま。

 後ろに倒れて、お尻からベタン!

「い、痛ったぁ~」

 ホント、なんであたし……こうアホっ子……?

 じんじんしびれるお尻を起こして、そのままかたまった。

 転んだ目の前。

 登山道の右側の木々が開けていて、その向こうに赤紫の丘が広がってる。

 しきつめられているのは、丈の短い草。

 草には、小鈴みたいな赤紫色の花がワサワサついている。文字通り、鈴なり状態。
 
 お花畑の面積は、校庭の四倍くらいかな。

 こんな場所、あったんだ……。

 浅山なんて、家のすぐ近くにあるから、生まれてからもう何回も来てるんだけど。まるで、ここだけ、別世界。風は、遠い遠い外国から吹いてきているみたい。

 鈴みたいな小花をゆらして、先っぽにトンボがとまった。

 トンボの胴体の部分が、いつも見ているトンボよりも大きい気がする。

「……ん?」

 じいっと、目をこらして。

 心臓がビクンととびはねた。