ナイショの妖精さん1

 ぶつぶつ言っていたら、ふっと頭の上に影ができた。

「どうした、(あや)?」

 見あげると、真央(まお)ちゃんの、大福みたいにふっくらした顔があった。

 いつものやさしい小さな目。くしゃくしゃやわらか、天然パーマのボブ頭。

(あや)ちゃん、いっしょにお弁当食べよ」

 有香(ありか)ちゃんもやってきて、あたしの横にビニールシートを広げだす。

 黒いつやつやの髪を、ふたつにむすんで胸にたらして。黒縁メガネの下の目は切れ長。有香ちゃんは、同じ年なのに、あたしより年上のオネエサマみたい。

 ホッとしたとたんに、両目から、涙がドバ~。

「真央ちゃん、有香ちゃ~ん! あ、あ、あたし、お、お弁当、わすれちゃったぁ~」

「え~? 綾、ま~た、ドジったのか~?」

「しょうがないな~。綾ちゃん、わたしのお弁当わけてあげる」

 有香ちゃんは、バレエ仕込みの背筋をぴんとのばして正座して、自分のお弁当箱をあけた。

「あ。有香の、すごいうまそ! エビフライに頭ついてんじゃん!」

 真央ちゃんも、お弁当箱を開けながら、もう(はし)をくわえてる。

 真央ちゃんは女の子なのに男言葉をつかう。態度だって、まんま男の子。デニムのミニスカートで、でーんって、あぐらをかいて。太ももが見えちゃってても、ぜんぜん気にしてない。

「ほら、綾には、うちのミートボールと、おいなりさんやるよ」

「わたしからは、ミニトマトと、カボチャの煮つけと。あとウインナー」

 真央ちゃんが貸してくれたお弁当のふたに、次々増えていくおすそわけ。

「うえ~ん! 真央ちゃん、有香ちゃん! ありがと~」

 胸がじ~んとして、それだけでもうお腹がいっぱい。

「次は、気をつけなよ」

「うん! うんっ! 気をつけるっ!」

「って、言って、またなにかやらかすのが、綾なんだよな~」

「ひど~い、真央ちゃ~ん」

 真央ちゃんてば、ゲラゲラ笑ってる。

 あたしと真央ちゃんと有香ちゃん。小学校に入って以来の友だち。

 おまけに、六年の女子の中で、中条を好きじゃない貴重な三人組。

 だから、結束はかたい。

「そういえば、綾ちゃん。午後からがんばってね」

「え? ……えっと? なにを?」

 あたし、首をかしげて、アホ毛をくるん。

「班行動で、浅山の遺跡を調べるんでしょ。綾ちゃん、中条の班じゃん」