ナイショの妖精さん1

「つまり、中条のお父さんはじっさいに妖精を見ていた、妖精学者だったってこと?」

「まぁ、おまえが妖精といるとうさんを見てんなら、そうだったんだろな」

 中条は冷めた顔のままで、本だなから、新しく本を引き抜いてきて、パラパラとめくってる。

 あたしの心臓はドクドク、ドクドク。

「スゴイ! ねぇ、中条! それって、ものスゴイじゃんっ!!  だってさっ! ここにある本を読めば、あの病気の妖精も助けてあげられるってことでしょっ!
も~っ !! こんなにステキな隠し部屋があるんだったら、もったいつけてないで、さっさと教えてくれればよかったのに~っ!! 」

「読めるのか、これ……?」

 ポスっと、つくえの上に、ハードカバーの本が置かれた。赤紫色の布が貼ってあって、金の刺繍でふちどりがされている。

 魔法の本って感じ。

 ドキドキしながら開いてみたら、中は印刷されてなくて、ページごとに、手書きで日にちが書かれてた。

 あ、日記だ……。

 青いつけペンで、スラスラと書かれているのは、英語。

 く……おじさんはイギリス人……。

「おじさんのバカ……日本語しゃべれるんだから、日本語で日記つけてくれれば、よかったのに……」

「おまえの都合なんか、とうさんは知らねぇって。日本語の本もあればいいんだけど……。ねぇな。やっぱりムダだったな」

 ポケットに両手をつっこんで、書斎を一周して、中条がもどってくる。

「――まぁ、そんなわけだよ。たしかにとうさんは妖精の研究をしていたし、じっさいにあのバケモノたちと関わっていたのかもしれない。けど、死んだ今となっては、本人からその話はきけっこない。
もちろん、オレは、なんも知らねぇし、ここに入ったのだって、小三のころ、一度かあさんの目をぬすんで、忍び込んで以来だ。
つまり、ここの本も読めないオレたちには、妖精のことなんか、お手あげってこと。
わかったら、帰れ。帰って、きのう見たことは、ぜんぶわすれろ」