ナイショの妖精さん1

「おい、行くぞ」

 カウンターから出てきた中条は、鍵についたリングを指先でまわしてた。廊下の階段を、のぼっていくのかと思ったら、おりていく。

「あれ? 地下室まであるの?」

 そういえば、外から見たとき、テラスの下に、崖にへばりついた、もうひとつの部屋があったような……。

 中条について階段をおりきると、つきあたりに木のドアがそびえていた。
 黒々していて、重たそう。人に入られるのをこばんでいるみたい。

「ここ、オレんちのあかずの間」

 鍵穴に鍵をさし込んで、中条がニヤっと笑った。

 とたんに、ぞくぞくと寒気が。

 だって今、中条の口元、ドラキュラみたいにゆがんでた。

 ガチャンと鍵がはずれて、ギイとドアが開いていく。

 そういえば、この人……なんで、あたしを家に呼んだんだろ……?

 リンちゃんたちでさえ、呼びたくないって家に……。


「ほら、入れ」

 背中を押されて、あたし、「ふぎゃっ!」って、とびはねた。

「い、イヤぁっ! 入んないっ!!  あんたの魂胆なんか、わかってんだからっ! あたしが弱みをにぎっちゃったから、中条、口封じのために、あたしをこの中に閉じ込める気なんでしょう!! 」

「はぁ? おまえな。人をどんだけ悪人だと思ってんだよ」

 だって、中は真っ暗。左側の大きな窓は、黒いカーテンで閉めきられてる。

「ったく。ここまで、のこのこついてきて」

 中条が大またで部屋に入っていく。シャッとカーテンを開けた。

 パッと、オレンジ色の光が、とびこんでくる。