ナイショの妖精さん1

 ランドセルから家の鍵を出して。ドアを開けて、中条は中にあごをしゃくった。

「店のことは、学校のヤツらに話すなよ。家におしかけられると、めんどうだから」

「え~? なんで? お客さんがあつまったほうがいいんじゃないの?」

「うるさいのはイヤなんだよ。年がら年中キャアキャア言われてたら、気が休まらないだろ?」

「なによ。学校じゃ、女子たちにかこまれて、ニヤけてるくせに」

「そりゃ、うれしいに決まってんだろ、オトコなんだから。別格みたいで気分いいし」

 なにこの人、サイアクっ!

「モテモテの自分」を人に見られるのは大好きだけど、みんなのいないとこじゃ、「ほっといてくれ」ってこと?

 やっぱり、女子たちを、にぎやかしぐらいにしか思ってないじゃん。

「ヒドイ、中条。リンちゃんたちは、本気で中条のことが好きなのに……」

「……べつに。だれも、本気でオレのことを好きなわけじゃねぇだろ。アレだよ。ドラマとかマンガのオトコにオレを重ねあわせて。勝手に妄想ふくらませて、楽しんでるってヤツ」

 ……冷めてる……。

 玄関にあがったら、廊下の横にお店の入り口があって、中には、脚がくるんと丸まったテーブルとイスが、たくさんならんでいた。
 お店は休みで、だれもいない。

 ふいごの置いてある薪ストーブ。壁からぶらさがるドライハーブ。海に面したテラスには、白いパラソルがアサガオの花みたいに開いてる。

「かあさんはまだ、買出し中だな」

 中条はカウンターの中に入っていって、ごそごそなにかやってる。

「……ねぇ、女子たちの気持ちがわかっててさ。中条はむなしくならないの?」

「べつに。いいんじゃねぇの? 利害が一致してるんだから」

 ……それはそうなんだけど。

 な~んか、もやもや。