ナイショの妖精さん1

 池みたいに広い模造紙を、マジックのきたない字と写真とヘンな地図でうめつくして。
 図書室を出たときには、太陽がオレンジ色にかわってた。

「じゃあね~、中条くぅ~ん 」

 ツインテールをゆらして、るんるん帰っていくリンちゃん。

「ばいばいき~ん」

 誠もかかとをつぶした運動ぐつで、ペタペタ道をまがっていく。

 人も車も通らない住宅街。低くつらなる一戸建ての屋根の向こうに、浅山のなだらかな山並みがのぞいている。

 反対側の住宅街が消えて、堤防にかわった。

 堤防の向こうは、色紙を空の下に貼りつけたみたいに、青一色。
 きょうは空が澄んでいるから、海の色も濃く見える。

「……おい」

 あたしの前を行く黒いTシャツが、ヌリカベみたいに立ちはだかった。

「おまえの家は、逆方向だろ? なんでオレについてくんだよっ!」

 中条の言うとおり。

 あたしの家は、学校の向こう側。ドラッグストアとか携帯ショップが建ちならぶ大通りから、道を一本入ったところ。

 中条の家は、この道をずっと歩いた高台にある。

 まわりにも何軒か家があるんだけど。ママからきいた話だと、急な坂をのぼっていかなきゃならない場所だから、引っ越してきても、生活がきつくなって、出て行っちゃう人も多いんだとか。

 それでなのかは知らないけど、うちの学年で、家がこっちにあるのは、中条だけ。

「……あのままでいいの?」

 あたしは口をとがらせて、相手をにらみ返した。

「なにが?」

「あの妖精のおねえさん、病気だった。あの年下の子、助けてほしくて、中条に近づいてきたみたいだった!」