ナイショの妖精さん1

 思い出したっ!

 あのとき、あたしは幼稚園の年中さんで。

 浅山に遠足に来ていて。迷子になって、かなしくて。
 あのおじさんに助けてもらった。

 ……あたし……昔も妖精を見てたんだ……。


「うわぁあああああっ!! 」

 思い出にひたるあたしの前で、中条が背中から倒れていく。
 右足と左足を交差させてるから、自分で自分の足に引っかかったみたい。

「うわ、うわ、うわ、うわぁっ!! 」

 砲弾倉庫の前に尻もちをついたと思ったら、今度は、腕をめちゃくちゃにふりまわしはじめた。

「な、なんだ、こいつっ! や、やめろ! きしょくわるい! は、は、はなれろ~っ!! 」

 中条の胸に、さっきの妖精の女の子がくっついている。

「チチチチ。チチチ、キン、キン」

 スプーンとフォークをかちあわせたみたいな。せわしない音。

 よく見たら、女の子が口をパクパクしてる。

 これって、妖精の声っ!?

「チチチチ、チチチチチ」

 青い目で、きゅっと中条を見あげて。ツツジのめしべみたいに細い両手でしがみついて。
「おねえさんを助けて」って、うったえているみたい。

「うわ、うわ、うわぁああっ!!」

 だけど、中条、前も見えてない。

 腕をふりまわしながら、立ちあがり。と思ったら、後ろにさがりすぎたせいで、レンガの壁に背中をうちつけて。自分の失敗なのに、「ぎゃあ!」とか、人にやられたみたいにおどろいてる。

 妖精の子の手が、ほどけた一瞬。

「に、逃げるぞっ!」

 中条は、つんのめるようにして、かけだした。