ナイショの妖精さん1

「――は?」

「中条、怖いんでしょ? もし、一番奥の穴のぞいて、もう一度見ちゃったらって思ったら、怖いから、なかったことにしたいんだ?」

「えっ? なになに? もしかして和泉たち、ホントにオバケ見たの~?」

 後ろから、誠がうれしそうに首をつっこんでくる。
 その誠のおでこを、中条がぺんっとはたいた。

「おまえはだまっとけ。――なんだよ、和泉。ケンカ売ってんの?」

 こめかみを、つっと汗が伝っていく。

 失敗したかもしれない。
 あたし、クラスのボスにかみついてる……?

 だけど、引きさがれない。
 せっかく妖精を見たのに、なかったことにして、このまま帰れない。

「いいよ、中条君。和泉さんは置いて、集合場所にもどろ。待ってたって、待ってなくったって、和泉さんは、どうせ迷子になるんだから」

「いや。オレものこる」

 あたしは「え?」と相手を見あげた。

 中条はジーンズの後ろポケットに両手をつっこんで、リュックの取っ手を片側にだけかけて、リンちゃんたちをふり返ってる。

「班長の責任があるからな。悪いけど、倉橋(くらはし)は誠を連れて、先に行って」

「は~? なんだよ、葉児(ようじ)ぃ~。オレものこってオバケ退治したいんだけど~」

「おまえがいると、さらに遅くなりそうなんだよ! おとなしく先行け」

 身長の低い誠の背中をひょいっと前に押し出して。しぶしぶリンちゃんと歩き出した誠を見送って。

 石膏みたいに冷めたほおが、あたしに向き直った。

「――で? なに? 度胸だめし、しろって?」