ナイショの妖精さん1

「……ふ~ん」

「戦争のときにつかわれた」って言われたって、あんまり実感わかないんだよね。

 それにここ、レンガをつんでつくられているから、一見、日本じゃなくて、ヨーロッパの遺跡みたい。

 たとえば、妖精が住んでいそうな……。

「中条君、そろそろ集合場所にもどろ。ここ、なんか肌寒くてオバケ出そう」

 立て札の文をうつし終わったリンちゃんが、自分の肩をさすった。

「だな。これ以上、写真撮るとこもなさそうだし、さっさと引きあげるか」

「え……あの……。でも……」

 あたしまだ、一番奥のアーチの中、見てないんだけど……。

 そっちへ歩きかけたら、「おい、和泉」って低い声で呼ばれた。

「なにしてんだ。行くぞ。これ以上、団体行動を乱すな」

「で、でもっ!」

 中条だって見たはずじゃない! あの中に妖精が入ってくのをっ !!

「でもも、けどもないっ!」

 あたしをにらんでくる、琥珀色の硬い目。
 その目の奥が、一瞬、ふ~ってゆらいで見えた。

 ……あ。なんかストンって、胃に落ちた気分。


「わかった。怖いんだ」