何分走ったんだろう。
花畑の中に、赤茶けたレンガ造りの壁が見えてきた。
レンガはうっすら、土をかぶっていて、はじが半分くずれ落ちている。
花畑にうずもれた地面に接して、アーチ状の入り口がならんでいる。
ひとつ、ふたつ、三つ、四つ……。
一番奥の穴で、光がチカンと反射した。
銀色のトンボの羽が、赤紫色の花を持って、穴の暗がりに入っていく。
あの中……っ!
追いかけようとしたとき、ザワザワと物音が近づいてきた。
「あれ~? 和泉じゃん! どうして、こんなとこから出てくんだよ~?」
壁の後ろから、ひょこっと顔をのぞかせたのは、誠。あいかわらず、つかいもしない木の棒を、釣りざおみたいにかついでる。
「ちょっと、和泉さんっ!? なんで、そっちから来るのよ? 中条君は?」
耳にさわるキンキン声は、リンちゃん。
……ほぇ?
あたし、アホ毛をゆらして、きょとん。
なんか一気に、現実にもどされたって感じ。
ふたりが出てきたところをよく見てみたら、レンガの壁の裏に登山道が通じていた。
レンガの横には、真新しい立て札が立てられている。
「第二砲弾倉庫跡」って横書きされた大きな字。その下に細かい説明がごちゃごちゃ。
「和泉さんがあんまりトロいから、中条君、しかたなく、あんたのようすを見に、道をもどったんだよ。会ってないの?」
リンちゃんにつめよられて、たじたじしてたら、「あ~、こっちこっち」と声がした。
中条が、のしのし花畑を歩いてくる。目は、めんどくさそうに半開きで。片手をダルそうにあげて。
いつもとかわらない、冷えびえ感。
背中に汗をいっぱい流して、ほっぺたがほてった、あたしとは大ちがい。
