内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です

 会話にやや間隔があき、彼は言う。

「消防訓練は年に二回以上行うと法令により定められていますが、営業部では参加していない社員が見受けられます。松村課長代理、あなたも該当者ですよ」

 他愛のない話をしつつ、きっちり監査をしていた。



「いや〜、抜き打ちヤバいっすね〜」

 会田君の笑い声が社員食堂に響く。お昼時をとっくに過ぎた空間はわたし達しかおらず、選択の余地がないメニューをテーブルへ並べた。
 休憩を挟んで監査が再開されると過ぎると、頂きますのポーズをしたまま天を仰ぎたくなる。

「今の時点でかなり指摘を受けてるし、もうボロボロ」
「課長になりたてって事で見逃してくれませんかねぇ〜?」
「見逃してくれると思う?」
「いや、無理ですね〜。榊原室長、正義マンって呼ばれてますもん。いくら正しいとしても仲間の揚げ足取りばっかりしてたら病みませんかねぇ〜」
「正義マン……安直すぎない?」

 監査結果はわたし個人の評価へ影響し、今後の出世に関わる事柄だ。当然、良好な方がいい訳で。
(通常業務もあるっていうのに、監査にだけ構っていられないよ)
 頭が痛い、食欲も出ない。

「食べないんすか〜? 冷めちゃいますよ」
「良かったら食べる?」
「いいんですか! いやぁ〜今月ちょっとピンチなんで助かります!」