内部監査部室長は恋愛隠蔽体質です

 前課長のような人間が何故ハニートラップに引っ掛かってしまったのか? それを解消したところで、会社が降格処分を覆す事はほぼない。
 わたしが今すべきなのは営業部の立て直しとコンペの成功。恩人と職務を天秤にかけ、揺らがせている場合じゃない。
(ないんだけれど……)

 仕事のイロハを教わった人がこの先、女性に騙され情報を漏らしたんだと後ろ指をさされるのは心苦しい。わたしの知る課長がそんな人間性じゃないって思っている。
 探偵気取りで現場検証したところで何の解決にも至らないと承知しつつ、カタンッと心が傾く。

「メイク直しをしてきます」
 わたしの出す結論に室長は珍しく口角を上げた。
「えぇ、私も一度戻りますね」
「現地集合でいいですか?」
「宜しければお送りします」

 この時間まで駐車場に停められた車は室長のものらしい。薄闇の中でも輝く愛車を紹介され、わたしは首を横に振る。

「タクシーで向かうのでお構いなく」
 言うと、わたし達は一度解散した。