異能少女は心霊ホテルから脱出したい

安心した私は右足を後ろにずらした。その時。

かかとが何かに触れた。

後ろを振り返り屈んで見ると、割れたガラスの破片だった。

靴を履いていたから危なくなかったけど。
ガラスの破片は細かい凹凸があり、背面なことから元は窓のすりガラスだったのかなと思う。

緊張状態を解いた後の私が脱力し無心でそれを眺めていると……

風が吹いて私の目の前の地面を枯葉が走っていく。

なんとなく枯葉が行った方向を目で追うと、目線は建物に突き当たって、そこには雑多な落書きが記されていた。

迷惑な落書きだけど、今はその能天気さに脱力する。
私は落書きのある壁に近付いて、子供じみた言葉や器用に装飾された字体を眺めた。

そして広がる落書きを建物の角を回り込んで見ようとした。

こちらの壁では落書きが数を増している。

そして壁に付けられた大きく割れている窓の向こうに懐中電灯を向けると、下に矢印があって窓口はこちらと書かれた紙が貼られていた。

窓口は左方向にあるらしい。もしかして宿泊者に対応する窓口は建物の玄関付近にあるんじゃないか。

そう考えた私は前に向き直って矢印の方向に従う。

雑草が少なくぽかんと開いた砂利の地面。
ちょうど向こうには出入り口にありそうなホテルの看板がある。

玄関の前の導線を辿っていけば敷地への出入り口に繋がる。

そんな思考によってトントンと足を進めていると、手から心行棒が落ちた。

あーあ落としちゃった。と屈んで拾おうとすると、足元のすぐ先がコンクリートで舗装されていた。

これは玄関前の舗装? はたまた建物の中の床なの?

ふと上を見ると、ドアの抜けた壁が目の前に聳え立ち、ドアの型の上部に四号室と書かれたプレートがあった。