いつもより涼しい夏の夜、一人で留守番をしていた私は二階のベランダで望遠鏡を覗き込んでいた。


なんとなしに星空を眺めて満足した私は、使い終わった望遠鏡を片付けようとした。望遠鏡を持ち替えるその時、手から望遠鏡が滑り落ちて、床にぶつかり、リングのパーツが衝撃で外れて飛び跳ねた。

そして外れたリングは家のすぐ下にある崖下の廃墟の方へ落ちていったのが見えた。

私は今残っている望遠鏡を直す。

暴風雨もないし人に取られるものでもない。日を置かずに回収すれば元に戻すのはそう難しいことではなかった。

でもこの望遠鏡は明日お父さんが使うかもしれないことを考えると早めに回収しておきたい。

普段ならこんな夜に外に出るのは危険だと止められるけど、今日はお父さんもお母さんも用事で朝まで帰ってこないから、それまでの間なら何をしてもわからないし、気付かれずに望遠鏡を戻すには親のいない今しかない。

私は望遠鏡を持って家の中に戻り、手に携帯などを持って崖下の廃墟に行くべく家を出た。


廃墟までの道のりでは、携帯もあるけど使い慣れた懐中電灯で照らして進む。道のあちこちに視線を巡らせるけどリングらしきものはない。

そうして私は二階から見下ろしていた廃墟の前に辿り着いた。