矢部先生が落とした鍵は、補習逃亡を防ぐためにこの教室を内側から閉じていた鍵。
 それを2階の窓から落とした今、私たちはエアコンの壊れた201教室に閉じ込められたということになる。

 サァァッと血の気が引いていく。他の補習を受けている人たちは、一時間目で帰ってしまった。
 
「血の気が引くってやつだな。ちょっと涼しくなった」

「言ってる場合!?」

あまり焦っていなさそうな夕崎くんにぎょっとする。

 窓にかけよって下を見ると、鍵は見事に地面まで落ちてしまっていた。

「ど、どうしよう…あれ、力が、抜けてぇ…」

 隣の先生が崩れ落ちる。そうだ、熱中症だったんだ。早く助けを呼ばないとまずい。でもここは2階で、窓から出ようにも落ちたら大怪我だ。