「さて、x=3ということが分かったね。ここからyを求めていくよ。」

 さっき計典くんは『紳士』なんて言われたので、ちょっと声が上ずっていた。

 「x=3を、①の式に代入して……。」

 「代入するって、なんか告白みたいじゃない?」

 「なにそれ?」

 私はそう言う採子の顔を見た。
 それを見て公則くんが真顔で採子を見て、

 「俺の気持ち(x)は3だぜ。おまえ(y)はどうなんだよ。」

 「ぷっ、ちょっとやだぁ。
 数学でナンパしないでよね。」

 しっかり採子も照れていたのを、私は見逃さなかった。

 「はいそこ、じゃれていないで問題解くよ。」

 「してないもん。」
 
 計典くんは呆れていた。

 これを①の式のxに代入するんだよ。

 3×3+4y=17
   9+4y=17
     4y=17-9

 「ここ、よく間違えちゃうんだよ。
 なんで9がマイナスになって飛んでいくのよ。」

 「ああ、これね。
 左の9を消すために、両辺から9を引いた。
 9を引くってね、―9を足すんだよ。
 4-3は、4+(-3)なんだね。」

 採子が計典くんに質問していた。
 同じこと、私が聞きたかったな。

 「僕は、闇落ちって言っているよ。
 =の世界の門をまたぐとマイナスになるんだよ。」

 「おい、どこのファンタジー世界だよ。」

 計典くんって、ちゃんと『遊んで』いるんだね。
 勉強ばっかりしていると思ったから、ちょっと『ほっ』とした。

 「うーん、ややこしいわね。」

 「そう、ややこしいけど、式はわかりやすくなったでしょう?」

 4y=17-9
 4y=8
  y=2

 だから、x=3,y=2

 「そんなに単純な答えなの?」

 私は計典くんにそう言うと、

 「ていねいに謎解きをすれば、答えは見えてくるよ。」

 「そうよね、両片想いだったって、今証明されたからね。」

 私が採子にそう言うと、すっかり照れていた。
 あら、採子ってかわいい。

 「ほら採子、ちゃんと気持ちを代入すると、相手の気持ちがわかるでしょ?」

 「あ~もう。
 私が答えを導かれて、どうするのよ。」

 「ちゃんとすっきりしたろ?」

 計典くんも、公則くんをしっかり見逃さなかった。

 「その、なんだ。
 今度二人で……。」

 そう公則くんが言いかけた途端、採子が、

 「テストが終わってからね。
 考えておくわ。」

 だって。