「そうだ計典くん、今度の試験には連立方程式もあるのよね。
私、苦手なのよ、ああいうの。」
採子が遠慮なく話した。
「ああ、2つの式から、2つの値、x,yを求めろってやつだろ?」
公則くんが横から口を出してきた。
「あんたはできるの?」
「……計典、頼むよ。」
「ほら珠奈、あんたもちゃんと聞きなさい。」
「えっと、計典くん。
お願いします。」
「いいよ。
それで、どの問題に困っているの?」
連立方程式を解け
3x+4y=17 ――①
4x+2y=16 ――②
「これはね、①と②のxとyの数をそろえて、足したり引いたりするんだよ。」
「数合わせをするの?」
「そうだね、それが一番近いかな。
この場合は、②の式を2倍して……。」
「なんかさ、それだと、相手に合わせて自分が背伸びしているみたいだね。」
採子の謎解説が始まった。
「ははっ、そうだな。
俺だっていつも気を引こうと頑張っているもんな。」
「そう? 結構私が気を遣っているのだけどね。
それがわからないうちは、寄り添えないのよ。」
公則くんと採子は、いつもこんな調子なのかな。
結構気楽に話ができているじゃない。
「それじゃ、次に行くよ。」
計典くんが新しく方程式を書いていた。
8x+4y=32 ――③
「この③の式は、②の式を丸ごと2倍にしたんだよ。」
「ふーん。それで、ここからどうするの?」
「今、①の4yと、③の4yが揃っているでしょ?
だから、この式を並べて、足したり引いたりして、4yをなくした式を作るんだよ。」
「え? どうやるの?」
「同じ数同士、引き算すると、0になるでしょ?
3-3=0、みたいに。
この場合は4y-4y=0をつくるんだよ。」
私は計典くんの言うとおりに、二つの式を並べてみた。
3x+4y=17 ――①
8x+4y=32 ――③
「ここね、順番は変えてもいいんだよ。
大きい数から小さい数を引き算すると、マイナスにならなくて済むでしょう?」
8x+4y=32
―)3x+4y=17
―――――――――――――
5x =15
x=3
「そう、これよこれ。
ちょっとした気遣いが、うれしいのよ。」
「そうよね、マイナスとかあると、計算間違いやすいから。」
「お嬢さん、そこ、危ないですよって、紳士に手を引いてもらう感じ?」
「べつに、そんなんじゃないって……。」
あれ、計典くんって……。



