計典くんが言った。

 「でも、まだ≡条件にはなってないって言ったじゃん。」

 私はちょっとだけ自信を持った声で言い返した。

 「でもね、4つの角が同じってことは、ほら――
 ①、②、③より∠ACD=∠BCE・・・④

 「いいね、あと少し!」

 ∠DAC = ∠DBC(弧DCの円周角) かつ EはBD上 だから ∠DBC = ∠EBC。
 よって ∠DAC = ∠EBC・・・⑤

 「この辺と、この辺も、元から同じだったよね?」

 AC=BC(仮定)・・・⑥

 ノートに描いた図の、点AからC、BからCを指でなぞりながら、

 「つまり、一辺とその両端の角が同じ。
 それって……≡になる、ってことでいい?」

 ④⑤⑥より
 一辺と両端の角がそれぞれ等しいので

 △ACD≡△BCE

 計典くんが≡条件に線を引いて、手を止めた。

 「うん、できた。」

 計典くんが満面の笑みでそう言った。
 ずるい……そういうの。反則だよ。

 「つまりさ……」

 ふいに、採子の声が聞こえた。

 「相性、ピッタリってことよね。
 ……図形的に、だけど。」

 計典くんが真っ赤になって下を向いていた。

 「なにその、『図形的に』とかいうクッションワード。
 これ、100点満点の合同告白じゃん。」

 公則くんが肩をすくめながら言った。

 「……じゃあさ、俺と採子も、合同か?」

 採子はきょとんとして、公則くんを見た。

 「え、あんたは……図形的にはどうなのよ。」

 「角度はたぶんズレてる。でも辺は……わりと、ぶつかる。」

 採子が、わざとらしくため息をつく。

 「やかましいわね。とりあえず補助線からやり直してこい。」

 そして今日も、円周上の4点は、
 ちょっとずつ、でも確実に『≡』に近づいていた。