SIDE 陽紡
私は七海、夏目、佐藤(せんせい)を連れて目が覚めた場所へと戻った。
海岸から自分の家を指差すと七海が興奮気味に目を輝かせ
「あの家、なに!?」
と、駆けてあの家へと近づく。
私は家の扉を開けてみんなを中に入れた。
すると、佐藤(せんせい)はまじまじと家の隅々を見て七海は楽しそうに家の中を駆けて周り、夏目はずっと入り口で立ち止まっている。
ようやくみんながそれぞれの場所に留まった。
「それで、これからどうするの?」
はじめに口を開いたのは佐藤(せんせい)。
佐藤(せんせい)がそう言っても、答えることはなかった。皆んな、考えていたのだろう。
この先、どうするかを。
七海は考えるように上を見上げて、
夏目は俯いたまま。
私はどうしようもなくてただ、口を紡ぐだけ。
「…、どうするかは知ってるはずだ」
佐藤(せんせい)は、静かにそう言い放った。
“どうするべきか”
私にはそれが理解出来ていない。
自分がどこから来て、どこに行くかなんてわからずにいる。
「警察…?」
七海が呟いた。
その言葉を聞いただけでさっきまで俯いていた夏目の額が急に上がって、悲しそうに眉を顰めて口を硬く結ぶ。
「…そうだ。皆んな帰るべき家がある」
再び、静寂が流れた。
皆んなどうする事も出来なくて、なにかを目指すことも出来ずただ定めに身を任せるだけ。
「ねぇ、この島になにがあったか…知ってる?」
しばらく沈黙があった後、七海が語った。
この島に起きたことについて。
「僕…、知ってるよ」
夏目がそういうと、七海も佐藤(せんせい)も俯いて悲しそうに目を伏せた。
そして、物語は語られる___。
時は2年前。真夏の早朝。
大きな地震が島を襲った。
人々は飛び起きてすぐに避難を始めたそう。
だけれど、それでも遅かった。
海から大きな大きな津波が押し寄せ、草花も家もなにもかもを飲み込んで…。
空から降る雨が残酷に島に流れていった。
その様子をただ茫然と眺めるしかない屈辱感、自分が育った島が壊れていく絶望感に苛まれ、なにも出来ないという無力感。
それを目の当たりにしたと七海は語った。
「もう…、やめよう」
佐藤(せんせい)が苦しそうに呟く。
それでも、七海は辞めなかった。
きっとこれは受け継ぐべき話なのだろう。
私も、夏目も真っ直ぐに七海の目を見つめた。
この島には代々受け継がれる宝石があるそう。
海色の綺麗な雫型の宝石。
遥か昔、七海たちが生まれるよりももっともっと昔の話。
島は重度の食料困難に陥り、食に飢える人々がたくさんいて争いも起きてしまうほど。
そんな時、一人の島人が神に祈ったそう。
「このままでは、島は無くなってしまう。
どうか、どうか我々を助けてくれ」
と。
すると、海の中から一匹の龍が這い出てきた。
「我の力でこの島を救ってしんぜよう」
そう言って龍は島に雨を降らせた。
そうして、島は作物がよく育つようになり食料がたくさん手に入るようになったそう。
龍の去った後、砂浜に落ちていたのがその海色の宝石。
だが、とある日から突如として雨が降らなくなってしまった。
それと同時に宝石も忽然と消えたそう。
そしてそれは今も、見つかっていない。
「みんなで、宝石探そうよ」
昔話を語り終えた後、七海がそう言った。
私の胸がどくりと鼓動する。
感覚でわかった。
私はその宝石を見つけるためにここにいるんだと
「…、うん。見つけよう」
私は、力強く頷いた。
夏目は最初は渋っていたが、覚悟を決めたよう。
私たちは一斉に佐藤(せんせい)の方を向いた。
佐藤(せんせい)はさっきから俯いたまま動いていない
「…、わかったよ」
佐藤(せんせい)がついに観念したように呟く。
その瞬間、重苦しかった空気が一瞬して崩れ、明るい風が吹いた。
「やったぁ!」
七海が嬉しそうに椅子から立ち上がり飛び跳ねる。私も嬉しくて、頬が緩んだ。
夏目もさっきよりも明るい顔をしている。
「ただし!」
佐藤(せんせい)の声で一気にはしゃいでいた空気が落ち着いた。
「期間は夏休みが終わるまで。
この夏が終わったら、夏目と陽紡は帰ること。
いいな?」
佐藤(せんせい)は私と夏目の目を真剣に見つめる。
私と夏目はおとなしく頷いた。
「早速、作戦考えよ!」
「「おー!!」」
私はいつも真実を知らなかった。
なにをするにしても仮説のみで。
真実は全て知れるものだと思っていた。
けれど、真実は一つのみしかない。
七海と夏目との友情と愛だ。
私は其れが知りたかったのだろう。
私は七海、夏目、佐藤(せんせい)を連れて目が覚めた場所へと戻った。
海岸から自分の家を指差すと七海が興奮気味に目を輝かせ
「あの家、なに!?」
と、駆けてあの家へと近づく。
私は家の扉を開けてみんなを中に入れた。
すると、佐藤(せんせい)はまじまじと家の隅々を見て七海は楽しそうに家の中を駆けて周り、夏目はずっと入り口で立ち止まっている。
ようやくみんながそれぞれの場所に留まった。
「それで、これからどうするの?」
はじめに口を開いたのは佐藤(せんせい)。
佐藤(せんせい)がそう言っても、答えることはなかった。皆んな、考えていたのだろう。
この先、どうするかを。
七海は考えるように上を見上げて、
夏目は俯いたまま。
私はどうしようもなくてただ、口を紡ぐだけ。
「…、どうするかは知ってるはずだ」
佐藤(せんせい)は、静かにそう言い放った。
“どうするべきか”
私にはそれが理解出来ていない。
自分がどこから来て、どこに行くかなんてわからずにいる。
「警察…?」
七海が呟いた。
その言葉を聞いただけでさっきまで俯いていた夏目の額が急に上がって、悲しそうに眉を顰めて口を硬く結ぶ。
「…そうだ。皆んな帰るべき家がある」
再び、静寂が流れた。
皆んなどうする事も出来なくて、なにかを目指すことも出来ずただ定めに身を任せるだけ。
「ねぇ、この島になにがあったか…知ってる?」
しばらく沈黙があった後、七海が語った。
この島に起きたことについて。
「僕…、知ってるよ」
夏目がそういうと、七海も佐藤(せんせい)も俯いて悲しそうに目を伏せた。
そして、物語は語られる___。
時は2年前。真夏の早朝。
大きな地震が島を襲った。
人々は飛び起きてすぐに避難を始めたそう。
だけれど、それでも遅かった。
海から大きな大きな津波が押し寄せ、草花も家もなにもかもを飲み込んで…。
空から降る雨が残酷に島に流れていった。
その様子をただ茫然と眺めるしかない屈辱感、自分が育った島が壊れていく絶望感に苛まれ、なにも出来ないという無力感。
それを目の当たりにしたと七海は語った。
「もう…、やめよう」
佐藤(せんせい)が苦しそうに呟く。
それでも、七海は辞めなかった。
きっとこれは受け継ぐべき話なのだろう。
私も、夏目も真っ直ぐに七海の目を見つめた。
この島には代々受け継がれる宝石があるそう。
海色の綺麗な雫型の宝石。
遥か昔、七海たちが生まれるよりももっともっと昔の話。
島は重度の食料困難に陥り、食に飢える人々がたくさんいて争いも起きてしまうほど。
そんな時、一人の島人が神に祈ったそう。
「このままでは、島は無くなってしまう。
どうか、どうか我々を助けてくれ」
と。
すると、海の中から一匹の龍が這い出てきた。
「我の力でこの島を救ってしんぜよう」
そう言って龍は島に雨を降らせた。
そうして、島は作物がよく育つようになり食料がたくさん手に入るようになったそう。
龍の去った後、砂浜に落ちていたのがその海色の宝石。
だが、とある日から突如として雨が降らなくなってしまった。
それと同時に宝石も忽然と消えたそう。
そしてそれは今も、見つかっていない。
「みんなで、宝石探そうよ」
昔話を語り終えた後、七海がそう言った。
私の胸がどくりと鼓動する。
感覚でわかった。
私はその宝石を見つけるためにここにいるんだと
「…、うん。見つけよう」
私は、力強く頷いた。
夏目は最初は渋っていたが、覚悟を決めたよう。
私たちは一斉に佐藤(せんせい)の方を向いた。
佐藤(せんせい)はさっきから俯いたまま動いていない
「…、わかったよ」
佐藤(せんせい)がついに観念したように呟く。
その瞬間、重苦しかった空気が一瞬して崩れ、明るい風が吹いた。
「やったぁ!」
七海が嬉しそうに椅子から立ち上がり飛び跳ねる。私も嬉しくて、頬が緩んだ。
夏目もさっきよりも明るい顔をしている。
「ただし!」
佐藤(せんせい)の声で一気にはしゃいでいた空気が落ち着いた。
「期間は夏休みが終わるまで。
この夏が終わったら、夏目と陽紡は帰ること。
いいな?」
佐藤(せんせい)は私と夏目の目を真剣に見つめる。
私と夏目はおとなしく頷いた。
「早速、作戦考えよ!」
「「おー!!」」
私はいつも真実を知らなかった。
なにをするにしても仮説のみで。
真実は全て知れるものだと思っていた。
けれど、真実は一つのみしかない。
七海と夏目との友情と愛だ。
私は其れが知りたかったのだろう。


