古びた木製の扉を開ける。

強い日差しが肌を照らしつけてヒリヒリと痛い。
砂浜とあの“基地”を繋ぐ木製の橋。
橋を渡って砂浜へと降り立った。
砂のざらざらとした感覚が足の裏に伝わる。
海の反対を見れば、木材や瓦礫が荒れた状態で置いてあった。
その瓦礫の側へと寄ってみる。
木屑、割れた木材、ボロボロになった瓦礫(がれき)
まるで見えなくするみたいに端に置かれている。
その瓦礫の隙間で綺麗に光る硝子(がらす)の破片を見つけた。
手を切らないようにそっと手に取ると、太陽の光でより硝子が輝く。
私はそれをポケットの中にそっと入れた。


崩壊した瓦礫を抜けて先へ行くと山の天辺まで続くコンクリート道があった。
その奥から、なにやら人影が歩いてきている。
居ないと思っていた人が居て私はその人を目掛けて早歩きをした。

丁度交差点に差し掛かった時、私たちの運命が交わった。

目の前には、島の住民であろう少女。
左から来る子は少し陰気臭(いんきくさ)い少年。

それぞれの道が交わる中心点の一歩後ろで三人の足が止まった。
まるで時間が止まったように。
でも、三人の間には夏風が通り過ぎた。
(せみ)の鳴く声が遠く響いている。
お互いがお互いの顔を見てきょとんとした顔。
互いが目を合わせ終わった後、三人の間には笑いが起きた。
みんな腹を抱えて大声で。
それが楽しさなのか、嬉しさなのかは分からない

笑いが過ぎ去った後、目の前の少女が言った。

「私、七海茜(ななみあかね)貴方(あなた)たちは?」

七瀬茜。
元気よく少女は名乗った。
首を傾げながら私たちと目を合わせている。

「ぼ、僕は夏目凛人(なつめりんと)

夏目凛人。
少し戸惑ったように声を震わせながら名乗った。
夏目とやらは俯いたまま目を逸らしている。

「貴方は?」

私は、自分の名前を思い出して声に出した。

陽紡(ひつぐ)