「なんで…、私の名前知ってるの…?」

なぜ、水龍様の口から私の名前が出たのか。
なぜ、私の名前を知ってるの…?

『お前は儂の娘じゃ』

水龍様がそう言った瞬間、みんなの目線が私に集まったのが分かった。
きっと、みんな困惑しているのだろう。
でも…一番困惑してるのは…、私だ。

『この島を監視するためにお前をこの地に落とした』

淡々と語る水龍様とは裏腹に水龍様の言葉が頭の中をぐるぐると動き回り、一層私を混乱させる。
なんで…、どうして…。
そんな事しか頭に残らない。

『お前ら…、なぜあの日儂がこの島を襲ったか分かるか?』
「気まぐれ…、じゃないの?」

まるで“真実”を語るように話す水龍様にみんな、混乱した。
でも、それと同時に“真実”を知る事を楽しく思っていた。


遥か昔、雨が降らなかった時があった時代。
飢餓(きが)が増え続けていき、島は崩壊寸前。
その時に出会った神。
その神のご加護(かご)でこの島には雨が降るようになった。

けれど、忽然として雨が降らなくなってしまった。

それによって、島の人々は作物が育たずまた飢餓に苦しむようになった。
すると…、段々と海の生き物を食すようになってしまった。

『だから、儂はお前らに(むく)いを受けさせたんじゃ!』

水龍様が声を荒げて言う。
涙を溢したくなるほどに怖くてたまらない。
でも…、向き合わなきゃいけない。
七海が、七海たちが愛してる島だから。

「報い…?」

突然、佐藤(せんせい)が呟いた。

「なぜ…、なぜ俺の嫁と娘まで巻き込んだ!?」

まるで感情が溢れ出したように佐藤先生は声を荒げて言う。
その迫力に思わず身を縮めた。

「俺の嫁と娘を返してくれよ…!」

『元はといえば、お前らが雨龍石を壊したのが悪いんじゃろうが!』

その言葉に佐藤(せんせい)は悔しそうに歯を食いしばった。
壊れた宝石…。
どうすれば…、全部元通りになるのだろうか…。

私は、ポケットの中からバラバラになった宝石を取り出した。