張り詰めていた恐怖が少しずつほどけて、代わりに温かいものがじんわり広がっていく。
「……信じても、いいんですね」 かすれるような声で問いかけると、日向さんは迷いなく頷いた。
気づけば頬を伝っていた涙を拭う前に、彼の胸に顔を埋めていた。 その体温に触れて初めて、心の底から「大丈夫だ」と思えた。
「……桜」
日向さんの視線が、真っ直ぐに私を射抜いてくる。
「じゃあ今日は、一緒に寝ないか」
その言葉に、頭が真っ白になる。
「……っ」
反射的に身を固くしてしまい、息が詰まった。
けれどすぐに、彼は続けた。
「変な意味じゃない。ただ……本当に隣で眠るだけだ」
低い声は驚くほど穏やかで、どこまでも真剣だった。
「俺の気持ちは、もう伝えただろ。……だから今は、怖さよりも“安心”を、君に感じてほしい」
その言葉が、心の奥にすとんと落ちていく。
胸の奥で固まっていた不安が、少しずつ溶けていくような感覚。
私はぎゅっと彼のシャツの裾を握りしめた。
「……嫌なら無理しなくていい。でも……隣で眠るくらいなら、きっと怖くないはずだ」
そう言って待ってくれる人が、目の前にいる。
ーーこの人は本当に、私のことを大事に思ってくれている。
喉が熱くなって、なかなか言葉が出てこなかった。
それでも、勇気を振り絞って声にする。
「……はい」
小さく、でもはっきりと。
「……隣で、眠りたいです」
言い終えると、心臓が耳まで響くくらいに早鐘を打った。
でも、不思議と怖さはなかった。



