酒井はキャップをひねって一口飲み、ほっとしたように肩を落とした。
「……すみません。やっぱり緊張してたみたいです」
「最初は誰でもそうだよ」
俺は腕を組み、画面を覗き込んだ。
「でも、入力スピードも正確さも悪くない。三日もすれば慣れる」
酒井は意外そうに目を瞬かせた。
「本当ですか?」
「嘘は言わない」
淡々と返すと、彼の顔に少しだけ安堵の色が浮かんだ。
数秒の沈黙ののち、酒井が小さな声で切り出した。
「……あの。御崎先生って、やっぱり昔からこういう研究の道を考えてたんですか?」
俺は少し考えてから、ジュースのラベルを指先でなぞる。
「昔からっていうと違うな。臨床が最初にあって、その上で“もっと深く知りたい”と思った結果だ。……ただ、こうして若い世代が関心を持ってくれるのは嬉しいよ」
酒井は驚いたように目を見開き、すぐに俯いた。
「……僕も、ちゃんとやれるでしょうか」
「やれるかどうかは、これからの姿勢次第だ」
静かにそう告げると、彼は小さく頷き、再び画面へと向き直った。
ジュースのキャップを閉める音が、ほんの少し彼の決意のように響いた。



