「日向さんは……あの時、どう思ってたんですか」
問いかけた瞬間、日向さんは少しだけ視線を伏せた。返事が返ってくるまでの沈黙が、やけに長く感じる。
「正直、信じられなかった。……でも、嬉しかった。俺にとって君は救いだったから」
――救い。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなる。けれど彼の声はどこか震えていて、私の知らない重みを抱えているのが分かった。
「理緒を送ったとき……俺は医者としてやっていける自信をなくしてた。あんなに生きたいって望んでた子ひとり救えなくて……続ける意味はあるのかって、本気で思った」
彼の横顔を見つめる。淡々としているようで、奥に隠された痛みが滲んでいた。
私が知らなかった日向さんの過去。その言葉の重さに、息を呑む。
「でも、君が言ってくれた。『俺みたいな医者になりたい』って。……真っ直ぐな目で」
日向さんは私の手を強く握った。その温かさに、心臓が跳ねる。
「……あれで救われたんだ。本当に」
私は何も言えず、ただ見つめるしかなかった。
彼が、そんなふうに思っていたなんて。私の言葉が、彼を支えていたなんて。
「そんな子と一緒にいられるなら、周囲の目なんてどうだっていい。俺は一生、君を守りたいって思った」
気づけば、視界がじんわりと滲んでいた。涙をこらえようとしても、胸の奥から込み上げてくるものは止められない。
「……日向さん」
掠れた声で呼ぶと、彼の視線がやさしく私に返ってくる。
私は泣き笑いしながら、ただ頷いた。
その誓いを、心の奥にまっすぐ刻み込むように。



