そのまま彼は、堪えきれないように私を引き寄せる。
次の瞬間、胸に重みと温もりが押し当てられた。
「……桜」
低く名前を呼ぶ声が震えていた。
胸に顔を埋めた彼の肩が小刻みに揺れている。
強くて、誰よりも冷静で、いつも私を守ってくれる人が――
今はまるで、迷子の子供のように泣いていた。
「……ごめん、ごめんな……」
掠れる声に、私の心臓も痛みでいっぱいになる。
私はただ、背中に両腕を回し、強く抱きしめ返した。
「大丈夫です。……泣いていいんです」
静かな部屋に、彼の嗚咽が滲む。
雪の降る夜、ようやく触れられた彼の一番弱い部分を、私は胸いっぱいに受け止めていた。



