彼は両手を組み、視線を落としたまま続けた。
「正直、どっちに転んでも……俺にとってあまり好ましい状況じゃない」
低い声が、静かな部屋に沈む。
「もし降ろされれば、俺は不祥事を抱えた助教って扱いになる。研究費も減額されるだろうし、今後の身の置き方を考えないといけない。
でも……教授が庇ってくれてる。
もし外されずにすんだなら、その分、あの人に恩を売ることになる。今まで研究なんてほどほどで良いってずっと言ってて聞き入れてくれてたことが、あの人の敷くレールに乗るしかなくなる」
唇を噛みしめるようにして言葉を切る彼の横顔が、胸に痛かった。
(どちらを選んでも、彼が自由でいられない……)
私は思わずカップを握りしめた。
「……そんなの、ひどすぎます」
声が震えていた。
でも日向さんはただ小さく笑って、肩をすくめた。
「そうだな。……けど、それが現実なんだ」



