私はそっと彼の胸に触れた。
自分から動くなんて、これまで考えもしなかった。
でも――今は、どうしてもしてあげたかった。
「……桜?」
驚いたように日向さんが私を見た。
「わたしも……日向さんを気持ちよくしたいんです」
頬が熱くなる。けれど、目を逸らさずに伝えた。
その瞬間、彼は少し苦しげに笑って、私の手を優しく包んだ。
「……無理はするな」
「無理じゃないです。……したいんです」
彼の瞳が揺れた。
しばし見つめ合い、やがて彼は小さく息を吐いた。
「……ほんとに、君には敵わないな」
そう言って抱き寄せられた温もりは、今までよりも強く、そして優しかった。
守られるだけじゃなく、応え合うための夜が、静かに深まっていった。


