彼と初めて出会ったのは、友人ー理緒の病室だった。
高校に入ってから体調を崩しがちになった友人は、またしても入院していた。
見舞いに行ったその日、ベッドの横でカルテに目を落とす一人の男がいた。
「あぁ、友達?」
顔を上げ、淡々とした声で言う。
「初めまして。循環器内科、医師の御崎日向です」
……綺麗な人だ、と思った。
端正な顔立ちに、無駄のない仕草。
「男の人を綺麗だ」と感じたのは、生まれて初めてのことだった。
だが同時に、冷たい水面のような無表情さと、必要以上に踏み込ませない空気を纏っていて。
その時は、ただ「綺麗だけど、近寄りがたい人」という印象でしかなかった。
ーーそれが後に、私の人生を大きく変える人になるなんて、その時は想像もしていなかった。


