抱きしめる腕にさらに力がこもる。
頬に触れる髪の匂い、指先に伝わる体温。
それだけで心臓が熱を帯び、抑えが利かなくなる。
「桜……」
名前を呼んだ声は、もう掠れていた。
彼女は少し戸惑ったように見上げる。
その瞳の奥に、不安と同じくらい確かな信頼が宿っている。
(俺を信じてくれる――なら、もう離せない)
唇を重ねた瞬間、全ての言葉は消えた。
柔らかな感触と震える吐息。
触れるたびに、彼女の体温が自分の欲を煽っていく。
「……っ」
桜の肩が小さく揺れ、指先が俺の服を掴んだ。
その仕草に、どうしようもなく胸が熱くなる。
(大事にしたい。でも……今はそれ以上に、確かめたい)
シャツの上から細い背を撫でる。
彼女の体がわずかに震え、同時に力が抜けていく。
拒むどころか、委ねるように寄り添ってきた。
「……もう少し、深く触れてもいいか」
囁いた声は、自分でも驚くほど必死だった。
桜は小さく瞬き、頬を染めながらこくりと頷く。
その一瞬の仕草で、心臓が破裂しそうになる。
抱擁は、熱に変わり。
触れる唇は、確かな行為へと――夜の静寂に溶けていった。



