グラスを掲げ、朔弥が軽く笑った。 「じゃあ、桜ちゃんの20歳の誕生日に、乾杯」 氷の触れ合う音が響く。桜は嬉しそうに頬を紅潮させ、カクテルグラスを唇に運んだ。 その横顔を見て、胸の奥が不思議な熱で満たされる。 ーー本当に、もう二十歳か。 付き合ってもう1年が経った。 俺は医師になって8年目の春を迎えて、 彼女は無事2年に進級した。 色々と慌ただしい春で、全てをゆっくりと祝う暇はあまりなかったけれど、それでもようやく一息ついた段階で、俺は彼女をこうしてデートに誘ったのだった。