桜は、静かに視線を落としたまま、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……私にとって理緒は、親友でした」
少しだけ遠くを見るように目を細める。
「中高一貫校で、高一までずっと一緒のクラスで……部活は違ったけど、テスト前に一緒に夜まで勉強したり、好きな本や漫画を貸しあったり。好きな人の話も……あの子としかできない話を、いっぱいして……」
声が細く揺れる。
「……あの子がいたから、私、中学も高校も本当に楽しかったんです」
その言葉の奥には、温かい思い出と同じくらい強い喪失感があった。
しばらく唇を噛みしめたあと、桜はぽつりと続ける。
「分かってます。日向さんは、きっと何も悪くない。どんな時も最善を尽くしてくれたって、頭では分かってます」
そこで声が詰まり、胸の奥にしまい込んでいた感情があふれ出す。
「……でも、それでも……やっぱり、私、寂しいんです」
最後の言葉はほとんど囁きのようで、けれど部屋の静けさに吸い込まれていくように響いた。



