だが――約束していた数週間後。
病棟のドアを押して入ってきた彼女の姿を見た瞬間、一気に胸の奥が冷たくなった。
理緒の足取りは重く、頬はわずかにこけ、笑顔は力なく貼りついている。
楽しみにしていた「友達との日常」のすべてをやり遂げるには、あまりに身体は追いついていなかったのだ。
ベッドに腰を下ろすと、彼女はふぅっと長く息を吐いた。
「……やっぱり、疲れちゃった」
無理に笑おうとするその顔は、楽しさと同時に“もう思うようには過ごせない”ことを本人が理解してしまったような影を帯びていた。
「理緒」
声をかけようとしたが、喉の奥で言葉が止まる。
――“無理をするな”と言えば、彼女の数少ない喜びを奪うことになる。
だが、黙って見過ごすこともまた、自分の無力さを突きつけられるだけだった。
彼女は毛布に身体を沈めながら、ぽつりと漏らした。
「でも……帰れてよかった。ほんとに、よかった」
その言葉の重さに、胸が強く締めつけられた。
笑顔を返すことさえ、痛みを隠すことさえ、精一杯だった。
もうきっと、彼女がこの病院の外に出られることはない。そう思った。
終わりが、近づいていた。



