牧師の息子のエリート医師は、歳下医学生に理性が効かないほど夢中です。(旧題:桜吹雪が舞う夜に)



検査の結果が安定していて、主治医チームの判断で「数週間の一時退院」が許された。
そのことを告げた瞬間、理緒の目がぱっと大きく見開かれ、次の瞬間ベッドの上で小さく跳ねるように喜んだ。

「ほんとに!? やったぁ!」

頬を赤らめて、両手をぎゅっと握りしめる。
「家に帰れる……! 学校のみんなにも会える! ねぇ、制服まだ着れるかな……!」

あまりに無邪気な反応に、胸がひどく痛んだ。
――その制服姿を見る日々が、どれだけ残されているのか。考えまいとしても、どうしても胸に重くのしかかる。

理緒は夢中で次々と口にした。
「友達とプリクラ撮りたいな。カラオケも行きたいし……! あ、でもまずはお母さんのごはんだ。病院食よりぜーったい美味しいから!」

彼女の笑顔は、病室では滅多に見られなかったものだった。
その輝きを見ているだけで、俺は「この子にこんな普通の喜びさえ奪ってしまうのか」と胸を抉られる思いだった。

「……はしゃぎすぎるなよ。まだ“治った”わけじゃない」
そう口では告げながらも、心の奥では(どうか少しでも長く、この笑顔が続くように)と願わずにはいられなかった。