「……先生は?」
理緒が首を傾げて、じっとこちらを見つめてきた。
「どんな学生だったの? 友達とわいわい遊ぶタイプ? それとも……ずっと真面目に勉強してる感じ?」
その問いに俺は一瞬だけ目を伏せ、肩で小さく笑った。
「……想像通り、後者だよ」
「やっぱり!」理緒がぱっと笑顔を見せる。
「でもちょっと意外。先生って……もっと完璧で、遊びも勉強も全部できちゃうタイプかと思ってた」
「完璧なんて、程遠いさ」
俺は苦笑しながらベッド脇の椅子に腰を下ろす。
「……授業が終わったら、ひたすらピアノの練習か、医学書を読むか。友達が合コンに行っても、俺はバンドの練習でスタジオにこもってた」
「えぇ……それ、青春じゃない」
理緒は大げさに目を丸くして、笑いながら毛布を引き寄せた。
「……でも、なんか先生らしい」
「らしい、か」
理緒の言葉に苦笑を深め、手元のペンを弄ぶ。
ほんの少しの沈黙のあと、理緒は少し真面目な声で言った。
「……でも、そういう先生だから、私は安心できる。適当にしてないって、分かるから」
その言葉が、不意に胸に刺さった。
笑って返そうとしたのに、声が出なかった。
「……ありがとう」
やっとの思いで小さく言葉を絞り出したとき、理緒はすでに少し満足げな顔で目を閉じていた。



