君が願う未来で、紫陽花にのせた嘘



廊下から、女の子たちの派手で華やかな笑い声が教室を突き抜けてくる。



勢いよくドアが開くと、
椎名マリアが一歩先に教室へ入ってきた。



椎名さんの色白で透明感のある肌と端正な横顔に、
朝の淡い光が柔らかく差しているようだ。

パーマのかかった栗色のミディアムヘアはふんわりと美しい。

顔は小さく手足は長く、スタイルの良い椎名さんの
制服の着こなしもお洒落で完璧だ。


膝上のスカートから伸びたスラッとした脚に同性でも、つい見惚れてしまう。


私はハッとし、急いでスマホに視線を戻す。



――私なんかが、
  ジロジロ見てたら失礼に当たっちゃう。



他のクラスメイト達も男女問わず椎名さんを目で追い、

静かな期待と憧れに満ちた空気が教室全体に広がる。


椎名さんは周囲を自然と惹きつける圧倒的 

“華とオーラ” があった。


「マリアと同じクラス、本当最高!」


と嬉しそうに星野さんがぴょこんと可愛く

椎名さんの腕にしがみつく。


ツヤツヤなボブヘアが揺れて、
小柄で愛嬌たっぷりの彼女は動物に例えると
子ウサギがピッタリな女の子。


椎名さんが小さく微笑みながら、

「乃愛は本当かわいいなぁ。
 みんなとも同じクラスになれたら良かったのに…」

と、星野さんの頭をヨシヨシしながら、
周りの女の子達の顔を残念そうに見ながら、
だけどどこか楽しげな表情を浮かべる。


他の子たちは

「2年はクラス替えないの、マジつまんない」

「男子達がマリアと同じクラスがよかったって嘆いてたよ」

と盛り上がっている。


椎名さんは笑顔を絶やさず、

軽やかに言葉を返しながらも、

自信に満ちたオーラでその場の主役になっていた。