我慢して生きることに疲れきった。それ以上に、飽きてしまった。
(俺様を勇敢さと勘違いしていた。目が覚めた)

「男でもできたのか!?」
「できないよ。こんなに疲れ果てた顔してちゃ」
「たまには百貨店で化粧品買えよ。身だしなみの範囲だろ。金出してやるから」
「おまえ、何にも知らないんだな。
てか私の話ちっとも聞いてなかったんじゃん」
「は?」

「身だしなみが必要なのは、おまえのほうだ」

彼氏だった時は小奇麗にしていた。
いつしか水で顔を洗ってヒゲをそってローションをつけるだけになっていた。
日焼け止めも塗らないし毛穴は開ききってるし、謎のブツブツはできてるし、デオドラントのにおいも似合っていない。やけに甘ったるくて気持ち悪い。よく見ないと肌荒れはわからない。だが、妻だからそう言うのがよく見えてしまう。
適当に買ったファンデーションとコンシーラーで上手く隠したつもりだろうが、甘えた性格までは隠しきれていない。
すべて嫌になった。顔も悪くて性格も悪くてケチなの最悪だ。

「私、プチプラのシリーズで肌にあったのがあるから」
「だから、たまには気分を変えて百貨店にでも、」
「子供ができた時のために貯金しようって言ったよね?」
「だから、たまには、って」
「お義母さん喜んでたよ。離婚したいって言ったら」
「!?」
「百貨店、いっしょに行ってくれないんでしょ。どうせ。
休日はそう。なんだっけ。推し配信者の配信ずっと観てるんだよね? 投げ銭いくらしてるの?」
「……」
「またグッズ来てたよ。ダンボール箱。あったでしょ? 玄関に」
「!!」

「さよなら」