書くことは私の秘密です

 これは恋だ、そう自覚した。
 私は恋をしてしまったのだ。

 私はこれまでのことを振り返った。

 彼の声や仕草を目にするたび、私の胸は騒いだ。
 夜、ひとりの時間になると自然と彼のことを考えてしまう。

 この気持ちに気が付くまでに時間がかかった。
 何しろ彼があまりにも身近すぎる存在だったからだ。

 彼は私のすぐそばにいた。
 ずっとそばにいた。
 だから気が付くのに時間がかかった。

 でも、これは隠さなくてはならない恋だった。

 身分が違うから。

 私は貴族で彼は平民。
 彼は私の父に仕える平民の召使い。

 この国では身分違いの恋はご法度とされている。

 恋は身分が同じものがするもの。
 結婚は身分が同じものがするもの。

 そう定められていた。

 だから私はこの恋を隠すことにしたのだ。
 そっと胸の内に閉じ込めることにした。

 この想いは誰にも気がつかれてはならない。
 私だけが抱える私だけの秘密。
 
 誰にも知られてはいけない。
 父にも母にも。
 きょうだいにも。
 屋敷の中の従者にも。

 もちろん、彼自身にも。

 これは私が隠す、誰にも知られてはいけない恋話だ。

 朝、私の目覚めは悪かった。
 昨夜、また彼のことを考えてしまい眠れなかったからだ。

 部屋のドアをノックする音がする。
 この遠慮がちなノックの仕方、これは彼のノックだ。

 高鳴る胸を抑えて、私はベッドから起き上がった。

「はい、いま開けます」