【改稿版】溺愛彼氏  失恋したらチャラ男が一途な本性を現しました

「わたしのせいって何よ? あぁ、もう本当に意味が分からない!」

 しばらく彼女が消えた方向を眺め、次はわたしがその場にうずくまる。

「残念ながら意味が分かってないの、ミユだけ。他の人はとっくに気付いてる」

 クイズを出題する口調で告げ、頭を撫でてきた。たとえ正解が分からなくても叱らない手付きは温かい。

「ミユは髪が短い方がかわいい、似合ってる。おや、でもニキビが出来てるな。寝不足? ビタミン不足か? よし、マンゴープリン食べるぞ!」

「こんな時に? そんな気分になれないんだけど?」

「こんな時だからこそ食べるんだって。帰ってもミユは青山の事を考えて泣いちゃうだろう? 俺はさ、ミユにお肌ツルツルでいて欲しいんだ」

 ニコッと効果音が付きそうな笑顔でこちらの憂鬱を掻き消そうとする。

 いつか片桐の笑顔を《太陽》と表現した子が居たけれど、どちらかと言えば《月》だと思う。月はわたしを優しく見守り、穏やかに照らす。それでいて裏側を絶対見せない。

 正直、片桐の本音が分からない。

「お肌がツルツルって……それより、わたしだけ分かっていない内容とやらは教えてくれないの? なんだか仲間外れにされた感じがして嫌だ」

「ふーん、知りたいんだ? どうしても?」

 浮かべていた明るい表情をさっと引き、手を差し伸べてきた。

「片桐?」