「あのさ、わたしが言うべき事じゃないと思うんだけど、お試しで付き合うとか止めておきなよ」
シンクに溜まった食器を見やり、慎重に言葉を選ぶ。泡でまみれたお皿がゴトンッと音を立て、底へ沈んでいく。
「どうして? そこから本当に好きになるかもしれないじゃん? 自分を知って貰うチャンスなのに?」
彼女の言い分はよく分かる、否定はしない。というか否定なんか出来ない。なぜかと言えば、青山君に告白した際にわたしもお試し彼女でもいいからと食い下がったからだ。
まぁ、このお試し彼女というのも片桐を見ていて思い付いたんだけど。
「ミユ、オーダーいける?」
噂をすればなんとやら、片桐がキッチンを覗く。
「あっ、アタシやるよ!」
さっそく張り切る新人に片桐は笑顔を向ける。バイトの時は前髪をピンで留めて襟足を結っており、表情がよく見える。
「じゃあ、お願いできる? 無理っぽかったら一人でやり切ろうとせずミユにフォロー頼んでね?」
「は、はい! 頑張るね!」
「あははっ、頼もしい〜。ミユ、期待の新人が入ってきて良かったな。人手が足らない足らないってグチってたじゃん」
さすが大型犬、鼻がよく効く。キッチンまで顔を出し、自分へ好意を寄せる相手を嗅ぎ分ける。
いったい誰のせいで人手不足に陥っているのか、知りもしないでーーいや、片桐の事だし勘付いてるかもしれない。
「片桐君、やっぱりかっこいい! バイト入って良かった〜」
ウィンクを受け、彼女の目はハート型になっていた。好きな人と話せてテンションが上がる、当たり前の反応なのにイライラしてしまう。
「……ここ、早く片付けちゃおうか」
洗い物は大まかな汚れを落としたら食洗機へかける。ピカピカとなって戻ってくるのを想像し、わたしの心も洗浄して欲しくなる。
シンクに溜まった食器を見やり、慎重に言葉を選ぶ。泡でまみれたお皿がゴトンッと音を立て、底へ沈んでいく。
「どうして? そこから本当に好きになるかもしれないじゃん? 自分を知って貰うチャンスなのに?」
彼女の言い分はよく分かる、否定はしない。というか否定なんか出来ない。なぜかと言えば、青山君に告白した際にわたしもお試し彼女でもいいからと食い下がったからだ。
まぁ、このお試し彼女というのも片桐を見ていて思い付いたんだけど。
「ミユ、オーダーいける?」
噂をすればなんとやら、片桐がキッチンを覗く。
「あっ、アタシやるよ!」
さっそく張り切る新人に片桐は笑顔を向ける。バイトの時は前髪をピンで留めて襟足を結っており、表情がよく見える。
「じゃあ、お願いできる? 無理っぽかったら一人でやり切ろうとせずミユにフォロー頼んでね?」
「は、はい! 頑張るね!」
「あははっ、頼もしい〜。ミユ、期待の新人が入ってきて良かったな。人手が足らない足らないってグチってたじゃん」
さすが大型犬、鼻がよく効く。キッチンまで顔を出し、自分へ好意を寄せる相手を嗅ぎ分ける。
いったい誰のせいで人手不足に陥っているのか、知りもしないでーーいや、片桐の事だし勘付いてるかもしれない。
「片桐君、やっぱりかっこいい! バイト入って良かった〜」
ウィンクを受け、彼女の目はハート型になっていた。好きな人と話せてテンションが上がる、当たり前の反応なのにイライラしてしまう。
「……ここ、早く片付けちゃおうか」
洗い物は大まかな汚れを落としたら食洗機へかける。ピカピカとなって戻ってくるのを想像し、わたしの心も洗浄して欲しくなる。

