【改稿版】溺愛彼氏  失恋したらチャラ男が一途な本性を現しました



 バイトでの持ち場はわたしがキッチン、片桐はホールを担当する。片桐というキャラクターは接客が向いており、もくもくと皿洗いする中に明るい笑い声を響かせる。

 お子様連れの女性、サラリーマン、わたし達みたいな学生などファミレスの客層は様々。彼はどんなお客さんにも柔軟な対応が出来る。店長によれば最近じゃ片桐目当てに来店する人もいるとか。

「ねぇ、片桐君って彼女居るのかな?」

「え?」

 新人の子が頬を赤らめ聞いてきて、無理やり結った毛先がアンテナみたく恋のシグナルを受信する。

(そうだった。片桐はお客さんだけじゃなく、スタッフとも仲良くなれるんだっけ)

 声に出さないでガッカリする。せっかく同年代の女の子が採用されても必ずと言っていいほど片桐へ好意を持つ。で、恋に破れ辞めていく。もはや片桐のせいでバイトが定着しない。

「もしかして、あなたと?」

 わたしが眉をしかめた理由を勘違いされる。

「彼女いないよ、別れたばっかりだから。片桐は告白されたら、お試しで付き合ってみる? って言うと思う」

 質問に対し、いつもと同じ答えを返す。

「へぇ、お試しでも付き合えるんだ!」

 それでいつもと同じ反応を返される。