「はぁぁ〜こういう所だと思う」

 ため息を吐いて、脇腹へ肘を入れておく。ちゃっかり写真のデータを貰おうとする片桐は大袈裟によろけた。

「いっ、痛ってぇ! 何だよ? こういう所って?」

「いちいち馴れなれしいの!」

「馴れなれしいも何も、仲良いだろ? 俺達」

 ウィンクしてくる。それは長い付き合いのわたしに通用しないしないだけで、周囲から黄色い悲鳴が上がった。
 片桐は女の子に誠実であると言えないが、友達としてなら楽しく付き合える。

「そういう意味じゃない。片桐は女の子を勘違いさせて泣かせてばかりじゃない? この間だってーー」

 ここまで注意して前方へ意識が向く。校庭に居たはずの青山君がこちらへ歩いてきた。
 すかさず片桐の手を払いのけ、脇に寄る。どうか構わず通り過ぎて欲しい。

「相変わらず仲が良いね。今からバイトかな?」

 しかし願い叶わず、青山君は律儀に立ち止まる。別れたからといって無視をせず、行き合えば挨拶してくれる。ありがたいけれど、きつい。

「う、うん」

 返事が上擦り、青山君をまだ特別扱いする自分を証明してしまう。雑談にすら応じられない狭い心がギシギシ軋み、まともに顔だって見られない。苦しい。

「マンゴーフェアやってるんだ〜良かったら新しい彼女と食べに来いよ! カップル割りあるぞ」

 すると片桐が再びわたしの肩を抱いた。