「見てみろよ、青山がまた告られてるぞ」

 放課後ーー片桐(かたぎり)のおもしろがる声に肩を竦めた。切ったばかりの襟足がちくちくし、胸もつられて痛くなる。

「ミユと別れた途端、これだよ? まるで二人が別れるのを待ってたみたいじゃん?」

「たとえ待っていたとしても関係ないよ。わたし達は別れたし、青山君が他の人と付き合おうと自由。ほら行こう、覗き見なんて趣味悪い」

 窓辺へかじりつき、野次馬精神全開の茶髪をバッグでこつく。と、見るつもりがなくても青山君が視界に入り、困り顔で相女の子と向き合う光景を映してしまう。遠目からでも相変わらずかっこいい。
 さらに相手の子はサラサラロングヘアーで大人しそう。もしかしなくても青山君が好みそうなタイプ。わたしとは正反対の雰囲気だ。

 そもそもの話、わたしが青山君みたいな人気者と付き合えたのは条件付きだったから。交際期間は一ヶ月と短かったけれど。

 憧れは憧れのままで良かったのもしれない。失恋がここまで痛いものだって知っていたら、あんな取り引きを持ち掛けなかった。