クールなバリキャリなのに甘く蕩かされています

残業を終えた営業部のフロアには、エアコンの低い唸り声だけが響いている。彼の手には、見覚えのあるキャラクターのハンカチが握られていた。その手は震え、目は真剣で深い色をしている。その瞳に映る私の顔は動揺に揺らいでいた。

「戸田さん、あなたが僕を助けてくれたんだ」
「...............」
「黙っていちゃ分かりません」

柊生くんの銀縁眼鏡が蛍光灯にキラリと光る。突然の告白に、私は戸惑うばかりだった。

「本当のこと、言ってほしいんです」
「........あ、あの」
「付き合って下さい」

彼の頬はほんのりと色付き、まるで少年のようだった。

「僕が年下だから駄目なんですか?」
「そんな、いきなりこんなこと言われても」

観葉植物がエアコンの風に揺れる。柊生くんはその腕を伸ばし、ゆっくりと私の背中を抱きしめる。突然の告白、突然抱きしめられた緊張で、心臓が破裂しそうにドキドキした。彼のシダーウッドの香りが鼻先を掠る。

「今まで気付かなくて、ごめんなさい」
「そんな......謝ることなんて.......ない」
「今更かもしれないけれど、好きです」
「.........」
「いつもそばで支えてくれる姿に惹かれていました」

私の目頭が熱くなるのが分かった。こんな人前で泣くなんて私らしくない。それでも一筋の涙が頬を伝い落ちる。私は柊生くんのスーツにしがみつき、小さく頷いた。