ただの感想。田宮くんはそれだけ言うと、くるりと背中を向けて出入口の方へ向かっていく。私はその背中を追いかけるようにして声をかけた。
「田宮くん、さよなら! また明日ね!」
「うん、桃ちゃんセンセも。……また明日」
私にとっては、田宮くんとの思い出はこれだけ。
アルバイト中、一人の生徒と他愛のない話をした。それだけの話で終わるはずだった。
現に田宮くんとは、その後も挨拶以外に会話をすることはなかったし、私もそれ以上話を振ることはなかったのだ。
でも、私は意識してしまった。あの日田宮くんと交わした僅かな時間で。少なくとも塾に来ている彼を目に留めてしまうくらいには。
関係を進める気はなかったし、誰にも言うつもりもなかった。忘れようと思ってアルバイト仲間の拓真先生に告白を受け入れたところでもあった。
だからあの日、バイト上がりの私を待ち伏せしていた田宮くんが突然私に告白してきたのは、まさに青天の霹靂だったのだ。

