桃ちゃんセンセと田宮くん


 俺の学校は世間では頭がいいと評される中高一貫の男子校だ。中学受験組が大半でほとんど帰国子女はいないのだが、中学から高校にあがる時に高校入試組に混じって毎年数名は入学していた。その内の一人とクラスは違うが部活が一緒で比較的親しかった俺はソイツから愚痴交じりに聞いたことがあるのだ。

 帰国子女ってだけで英語は楽勝と思われる。日常会話と入試英語は違うのに。っていうか、受験英語、普通に難しいから。
 と。

 きっと桃ちゃんセンセも同じ経験をしてきたのだろう。だから俺が素直に褒めた英語もからかわれていると思われた。
 分からないわけではない。けれど、何故かモヤッとしたものが残ったのは事実だった。
 謝ったところで桃ちゃんセンセに俺の素直な気持ちは伝わらないだろう。詫びてもう一度聞かせて、と言ったところで桃ちゃんセンセは首を横に振るのが目に見えている。
 どこか中途半端な気持ちのまま、俺はいよいよ佳境になってきた受験勉強に精を出すしかなかった。時折、自身でもWe are all different, and we are all good.と呟きながら。

 全然桃ちゃんセンセみたいな耳に残る発音にはならなかったけれど。

 小さなトゲのように普段は意識していないのだが、時折気になるその存在がなんと呼ばれるものなのかを俺が自覚したのは、本命の国立大学の前期試験を終えた次の日だった。