桃ちゃんセンセと田宮くん



「違うよ。……この詩、っていうか、桃ちゃんセンセの英訳がさ、この7年、時折思い出していたんだ」
「なんでよ?」
「specialでもwonderfulでもなくてgoodでしょ。高校までは正直勉強に苦労したことなかったんだけど、大学に行ったらやっぱ違ってて。知的好奇心を満たされて満足すると同時にみんなすごくて、自分にはその着眼点ないことが悔しくてさ。でも……」
 田宮くんは笑った。よく塾の時に見せていた大人びた表情で。
「桃ちゃんセンセならきっと、every one(みんな)じゃなくて、we are(私たち)が。special(特別)でもなく、wonderful(素晴らしい)でもなく、good(よい)でも充分でしょ、と言うんだろうなぁ、と思ったら開き直れたんだよね」
「はぁ……。ありがとう、でいいのかな?」

 私がそのセリフを言った瞬間、田宮くんは噴き出した。
「その言い方、桃ちゃんセンセだ」
 私はブスッとしてコーヒーを飲み干すと、そろそろ時間だからと立ち上がった。
 その瞬間、田宮くんが私の手を掴んだ。