「決めたよ、真子。あたし、あそこのカフェでバイトする!」

「あそこのカフェって……この前買い物の途中に行ったとこ?」

「そう!」

「ねえ、あんた。ひょっとして『あの店員』目当てとか言わないでしょうねえ」

「へ⁉ い、いや~前からバイトするならオシャレなカフェがいいなーって思ってたんだって」

 目を泳がせるあたしに、真子がおもいっきり疑いの目を向けてくる。

「……すみません。おっしゃる通りです」

「もうっ。そんなんで決めちゃって大丈夫? もし彼女がいたらどうするつもりよ。いくらバイトでも、始めました、すぐ辞めました、ってわけにはいかないんだからね?」

「わ、わかってるって。でも、大学生といえばバイトでしょ? やりたい! って思ったときが始め時だっていうし」

 いくらいろんな言葉を並べたところで、言い訳にしかなっていない気がする。

「まあねえ。陽菜、ずっとバイト探してるって言ってたし、なにかきっかけがなければ決められないってのも一理あるし。一度ダメ元でやってみればいいんじゃない?」

「ダメ元って! なんかヒドイこと言われてる気がするんだけど……。じゃあ真子は今の本屋のバイト、どうやって決めたの?」

「わたしは本が好きだから、本に囲まれたバイトをするってずっと前から決めてたの」


 ……聞かない方がよかったかも。

 あたしの邪な理由が際立ってしまうだけだった。