定期試験の最終日、怜はまたしても満点を取った。だが、そこに喜びはなかった。鉛筆で丁寧に埋められた解答用紙は、怜の世界そのものだった。数字と記号、完璧な回答。それ以外は、ただのノイズに過ぎない。

高校生活は、怜にとって無機質な日々だった。友人たちとくだらない話で盛り上がったり、放課後に寄り道したりする時間も、将来の目標もない彼にとっては、意味のないものに感じられた。彼は、ただひたすら机に向かう。それが、彼の唯一の居場所だった。

ある日の放課後。怜は、ふと立ち寄った病院の図書館で、古びた医学書を手に取った。それは、彼の興味を惹くものではなかったが、いつものように完璧な答えを求めてページをめくる。

窓の外は、もう夕暮れ時。オレンジ色の光が差し込む静かな部屋で、彼は古びた医学書を手に取った。それは、彼の興味を惹くものではなかったが、いつものように完璧な答えを求めてページをめくる。すると、見慣れない少女が、彼の近くの棚から本を取って、そっと話しかけてきた。

「ねぇ、君、いつもここにいるよね」

少女は、怜とは正反対の、明るく屈託のない笑顔を浮かべていた。怜は、感情のこもらない声で「勉強をしているだけだ」と答える。少女は、少し寂しそうな顔で「そっか」と呟き、去っていった。

翌日、怜は再び図書館を訪れる。すると、少女がまたやってきた。彼女は、怜の隣に座り、楽しそうに話しかけてくる。

「私の名前ね、音々(ねね)っていうんだ」

音々と名乗った少女は、怜とは違い、明るく、いつも笑顔を絶やさない。怜は、そんな音々に少しずつ心を開いていく。そして、音々との出会いが、怜の人生を大きく変えることになる。