代わりに、彼女の手を取る。
 細くて、力のない手。僕の指で包み込むと、咲は驚いた顔でこちらを見た。

 「咲。俺は君を“患者”だなんて思ってない。……大事な妹だってちゃんと思ってる。」
 「……ほんとに?」
 「本当。」

 咲は少しだけ目を細めて、それから急に僕の手を振り払った。
 「お兄ちゃんはずるい。そうやって優しいこと言って、私を騙して薬飲ませようとする」

 そう言って背を向けた彼女の頬が濡れているのを、僕は見なかったふりをした。