近くのベンチに座らせ、咲は悔しそうに小さくうなった。
　「……なんで、こんなに自由になれないんだろ」
　「自由になれるのは体が許す範囲だけ。無理すると、また点滴しないといけなくなる。」
　「……うん」
　咲の肩が小さく落ちる。

　兄は静かに息を吐き、手を握った。
　「分かってるだろ。俺はお前の行きたいところ、やりたいことを奪いたくない。でも無理して倒れたら、どこにも行けなくなるでしょ？」
　「ごめんなさい……」
　「謝んなくていい。でも、これからちゃんと身体の事考えて行動しなさい。」
　「……はい」